Vol.35 はみ出し者の地平線  著:明媚 朋郎

残暑厳しい中、皆さんいかがお過ごしでしょうか?蝉のうるさいこの季節、灼熱の下、歪むアスファルトを歩いていると色んな事を考えますよね。最早一体どこがゴールなのか、一体どこがスタートだったのか。今が正しいのか間違いなのか。咽せかえる湿度の中、霞む視界の底、封印していた忌々しい記憶が甦ったりもする訳でね。唐突に言わせてもらうが俺が初めて自慰行為(オナニー)を覚えたのは13歳くらいの頃。当時の先輩に「怒張した逸物を上下にいじっていたらなんか白いのが出る。変な気持ちになっても絶対に止めないこと」なんて教えられて何を思ったか親戚の家でいじりだしたのをしっかりと覚えている。「こんなところでオシッコをしてはいけないのに、オシッコが出そう」もうそれは当時の俺にとっては訳の解らない激しすぎる感覚だった。オシッコをこんなところでしてはダメだと勿論解ってはいるのだが逸物を握り締めた手が、上下の動きを止めようとはしないのだ。生まれて初めて理性を越えた瞬間。オーガズムを迎える。白濁の液体を吐き散らかした逸物はグッタリとなり、先ほどまで「もう死んでもいい」と思うほど昂ぶっていた気持ちは急に冷めてしまい、どうしようもない後悔と罪悪感に苛まれる。物凄く悪いことをしてしまったと己を恥じてしまうのである。人間というのは恐ろしい生き物だ、その罪悪感にも心の痛みにも結局は慣れていってしまうという事実。それはどんなに高尚だと言われる人物ですら否定できないはずだ。一体何が言いたいのかと申しますと、「恥をかけ!羞恥心の向こう側にこそ真実がある」と言いたいのだ。かく言う俺なんてラモーンズをラモネスと読み間違えたまま音源を買いに行った店で「ラモネスありますか?」と問うたところ店員に「フッ。ラモーンズはありますけどラモネスは置いていません。おそらくラモーンズの事じゃないですか?」と切り返されて「違う!電撃バップのラモネスを探してるんですよ!」と恥の上塗り発言をしてしまい。店員に「電撃バップはラモーンズですよ(笑)」と軽くあしらわれて・・・・「はいはい。そういう意見もあるよね」なんて吐き捨て店を後にした事もある、泣きながら。16の頃に丁稚奉公した墓石屋の初任給で買ったレザージャケットにペンキで「PUNK」と書いたつもりが「PANK」になっていて、間違いに気付かずにライブハウスでこれ見よがしに着ていたそのレザージャケット指差されて「あいつPUNKの綴りまちがえてねえか?Aだよ!Aになってる!」なんて聞こえてきて・・・・聞こえた瞬間に自分の事だと解かって。俺、俺、ライブハウスに居辛くなってお目当てのバンド見ずにドアを蹴り開けて帰った思い出もある。帰り道に雨が降り出して尚一層悲しくなって、旭川(地元の川)に架かる橋の中央で川を眺めていたら、自分で墨汁と縫い針で彫った「PUNK」って刺青を例のレザージャケットを脱いで恐る恐る確認したら・・・案の定「PANK」になっていて・・・・・もう俺、俺。パンクが好きで好きでたまらなかったけど、先輩に「それこそパンク!」なんて笑いながら言われたけど。出来れば恥なんてかかずにカッコいいパンクスでいたかった。けどね恥は完全に力になった。怒りの力!君はその力を使っているかい?はジョー・ストラマーが言った言葉だ。俺は上京当時、新宿ロフトの近くに住んで毎日のように新宿ロフトに行っていた。(Oi!Oi!一体何歳だよ!)笑われるわけですよ、吸ってるタバコから飲む酒まで全部。ドクターマーチンの紐の通し方から着ているシャツ、頭の先からつま先まで否定されて恥ずかしくて恥ずかしくてマジで穴があったら入りたい!で穴に隠れても出ている尻を否定されて・・・・某大御所パンクバンドの方に打ち上げについてこいと言われて嬉しくてついて行ったら「お前はパンクじゃない!(アンタの言うパンクじゃなくて安心)バンドのアンプも持ってない?(うるせえよ!大した音だしてねえくせに)機材車もない?(普通免許すらねえよ)今すぐ荷物をまとめて実家に帰れ!(孤児院出身で実家もねえよ」「ピストルズを百万回聴け(物理的に無理だろ)」等の珍アドヴァイスを頂いたり。「誰の許可を得てそんな恰好してるんだ?」(スキンズの服装には許可が必要らしい)、「お前は女の子みたいな酒飲んでるな・・・・すいません!青リンゴサワー!」もうね、カルチャー・ショック通り越して一種のトラウマですよ。トラウマ。一番心底嫌なのは○○さん知ってる?○○さんの知り合いで的な自分の名前を名乗るより名のある方の名前を語る方々。中でも凄かったのが18の頃に打ち上げで出会った人。当時ね、俺はARBも石橋凌さんも全然知らなかったんだけどさ、「凌さんならきっとここでこう言う」(知らねえよ)「凌さんはあの時こう考えていた」(わかんのか!)「凌さん凄いよね!ね!エッ!君、凌さん知らないの?モグリだよ!マジで?じゃあ君はパンクでもロックでも無いよ」(うるせえよ!凌さん凌さんって、こち亀か!)嫌な思い出がフラッシュバック!甦るぜ~。なんてね。そんな事を思い出したりしていたんですよ。最近のヤングで目を疑って二度見するようなオリジナルな格好をしている元気な輩は見かけなくなったけど。偉そうに講釈垂れる先輩方は沢山いらっしゃるんじゃないでしょうか?まあ何にせよこれを読んでいる恥ずかしさ真っ只中のヤング達は恥ずかしさを恐れずにドンドンぶつかってカッコエエって言われるように、否、自分で自分を好きで居られるようにバッチリ生きて生きて生きまくってね!うん。偉そうに講釈垂れてきた先輩をブチ抜いてやりましょう。けど敬意を忘れずにね。自分達が今あるのは先人のシーンに対する尽力の御蔭。そして偉そうな事を沢山言ってしまった先輩達も言ってしまった後輩に馬鹿にされないようにいつまでカッコよくいてください(俺か!俺の事言うてるんだろ!)