新連載!Vol.64
はみ出し者の地平線
著:明媚 朋郎


ハッキリ言って日本ではスキンヘッドが誤解され続けているのが現状だ。
スキンヘッドという物は本来差別的な思想を持ったトライブ、ユースカルトではなかった。
黒人文化とも密接な関係にあって成立していたスタイルだ。そんな純然たるスキンヘッド・バンドとして80年代に吹き荒れる右向け右な右傾化の風にスタンスを崩すことなく活動してきたTHE OPPRESSEDがまさかの来日を果たす。
“ANTI-FASCIST Oi!”(反ファシスト・オイ!)。混じりっけ無し純度100%のストリート・パンク。SPIRIT OF ’69の精神、アティテュード全開のスキンヘッド・バンド。
愚直なまでに直向きにOi!ムーヴメントを継承したTHE OPPRESSED(ジ・オプレスト)。
私は幸運にも1994年、最初の再結成後はリアルタイムで追いかける事が出来た。それに伴い内も外も多大な影響を受けた。
ある時は励まされ、ある時は檄を飛ばされ、スキンヘッドとは斯くあれと教科書の様な存在だったのは間違いない事実、この場を借りて最大限のリスペクトと感謝を贈りたい。個人的な感情は置いといて話を戻す。
時はさかのぼり70年代後期から80年代初頭、パンク・ムーブメントは地方都市カーディフにも吹き荒れた。
1977年5月24日、カーディフを直撃したザ・クラッシュのホワイト・ライオット・ツアー1977が決定的だった。ロンドンだけではなく各地方にシーンの基礎が火種と共に出来あがっていった。
そのムーヴメントが沈静化していく1980年前後、所謂リヴァイヴァル・スキンヘッド旋風が吹き荒れる中、流行でラスト・リゾート・ショップにたむろし出したトレンディー・ワンカーズやモックニーと彼等は確実に一線を画していた。
地方都市のプライド、右傾化するトライブに対する冷静な目線は後の彼等のスタンスに反映された。
集団心理に流されるのはユース・カルトの常。より過激に、より暴力的に若者達の思想は傾倒していくのもまた必然だったのだろう。
故に流行のスキンヘッド・ルックに身を包み武骨なロックを演奏をし、労働者階級の振りをして粗暴に振る舞うバンドも数多く在ったと聞く。
それらのバンドとジ・オプレストとの決定的な違い、それはスキンヘッドの音楽や文化に対し、ヴォーカルのロディーの造詣と愛情が 物凄く深かったという点。流行のユースカルトに流されて今日はモッドで明日はスキンヘッド、明後日はパンクなんてポーザーとは物が違うってこと。簡潔に言えばリバイバルや世間の流行とは関係なく彼はスキンヘッドの文化そのものに恋していたのだ
。愛情あるカヴァーソングの選別、スリーブや服装に滲みでているこだわり、階級闘争を歌えばリチャード・アレンの悪漢小説(あのモリッシーも枕の下に隠しながら読んでいた)も地元フットボール・クラブの応援歌もスキンヘッド・プライドの下、信念に基づくスタンスでプレイするスキンヘッド・バンド、それがジ・オプレスト。SKINHEAD- IT’S A WAY OF LIFE。
そして遂にこの度2015年9月20日、BOOTSTOMP RECORDSの招集によりジ・オプレストが初来日を果たす。
この来日は物凄く意味がある様に感じるのは自分だけでしょうか?
今、世界中を取り巻く陰鬱で邪な雰囲気、絶望に縁取られた世界で綱渡りの様な毎日を生きる人々。一触即発の緊迫した世界情勢。
人類が破壊していく自然に比例して確認される異常気象は最早異常でもなくなり、日常と化し民衆は少しづつ麻痺してゆく昨今
。暗い出来事ばかりで憎しみや悲しみが人の心を覆っていく。
負の連鎖、悪循環、人は解りあえず殺し合いに拍車がかかってゆく、憎しみは尚も燃え上がり暗く濃い影をいくつも産み落とす。
ジ・オプレストが歌った様に肌の色など関係なく、生まれや育ちなど関係なく、信じる神様も関係なく、共に手を握り歩んでいかなければいけない時代。本気で肌の色が違うからってだけで、生まれや育ちが違うってだけで人を本気で憎む事なんて出来るのか?悪戯に差別や憎しみを煽る事はあってはならない。
絶対にあってはならないのだ。元来スキンヘッドにそのような思想は全く関係ないという事をおぼえていてほしい。
暴力的な物に憧れ、過激な物に流れ、挙句、洗脳されて本来憎む相手でもない人に対し憎しみを抱いたり、本来、闘う必要のない人に闘いをいどんだりする暇があるのなら、自分の人生 の為に闘え!とロディーは歌っています。
憎しみや暴力では未来の扉は開かないのだ。ジ・オプレストの曲や姿勢が先ずアナタの心の扉を開く事は間違いない。
心を開いて耳を傾けていただきたいというのが筆者の一番の願いなのです。
(日本盤ベストCD日本限定ベスト盤『GREATEST BOOTSTOMPIN' HITS』ライナーノーツからの抜粋)

景山潤一郎(THE PRISONER/VILLAINY PRISON RECORDS)

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